手のひらの中におさまる、小さな道具。中村豊実「茶則」

手のひらの中におさまる、小さな道具。中村豊実「茶則」

滋賀県長浜市を拠点に、食器や中国茶器、耐火鍋などの陶器を手がける陶芸家・中村豊実(なかむら・とよみ)さん。かつてレストランを営んでいた経験をもとに、「使いやすく、欠けにくく、それでいて美しい器」を目指して、ひとつひとつ丁寧に制作されています。

このたび、煎茶堂東京での取り扱いが始まりました。今回は、茶葉をすくい、急須に流し込むための道具「茶則」をご紹介します。

レストランから、陶芸の道へ。

中村さんが器づくりを始めたきっかけは、実はレストラン経営で経験した器の破損でした。

当時営んでいたイタリアンレストランでは、日常的に食器が割れたり欠けたりしてしまう。そんな現場の課題を前に、「それなら自分で作ってしまおう」と思い立ったのだそうです。

欠けにくい器をつくるためには、縁を少し丸く仕上げること。やがてその感覚は、料理の邪魔をしないシンプルな造形、そして使いやすさを宿す器づくりへとつながっていきました。

「技術が上がると、つい作り込みすぎてしまう。でも大事なのは、その“塩梅”をどこで止めるかだと思うんです。」

理屈ではなく、感覚で手を動かす。中村さんの器には、そんな柔らかさと潔さが同居しています。

道具の役割を、静かに果たす。

茶則は、茶葉を一度受けてから、急須などに流し入れるための道具です。

中村さんの手がける茶則は、淡くマットな白釉で仕上げられ、茶葉の緑をふんわりと引き立てます。立ち上がりのある縁の部分だけ焼きしめられていて、ニュアンスを感じます。茶葉を扱う所作が自然と美しく見える、そんな静かな力を持っています。

釉薬をつけ込む時の指のあとも、作る過程を感じられる特徴のひとつ。

釉薬のたれやごく小さな凹みも、すべて一点ものの味わい。必要以上に飾らず、けれど手に取るとたしかな存在感があります。

お茶の時間を、少しだけ丁寧に整えるための道具として。毎日の一煎にそっと寄り添ってくれる一品です。

中村豊実さんの作品一覧

フードスタイリスト・鈴木愛

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