旬を味わう季節の話。新茶摘みの季節には

旬を味わう季節の話。新茶摘みの季節には

千利休の要望により、渋みを抑えた茶葉が作られるようになったという京都の宇治・白川。16世紀から続く茶の名産地、白川で、代々の茶農家に育ったという山下佐枝子さんに、季節の風物詩である新茶摘みの風景のことを教えていただきました。

お昼にはおにぎりとたっぷりのほうじ茶を

茶摘みのシーズンは、年によりますが、5月のはじめから、6月の県祭(あがたまつり・宇治を代表する祭り。街灯をすべて消した暗闇の中で梵天渡御(ぼんてんとぎょ)と呼ばれる儀式が行われる)頃までです。

少ない時には30人ぐらい、多い時では50人ほどのお茶摘みさんに来ていただいて、だいたい朝6時から18時頃まで、摘採(手摘み)をします。

うちの茶園はとても不便なところにあるので、車やバイクでいらっしゃる方たち以外は車で迎えに行きます。食事をするところも近くにありませんから、朝ごはんのおにぎりやお昼のお弁当、おやつを用意して。そしてほうじ茶も朝、昼とたっぷり沸かして皆さんが召し上がれるようにしておきます。



碾茶(抹茶)は煎茶とは違い、茶園の上に葦の木で編んだよしずを広げ、その上に藁を葺いて日光を遮る「覆下栽培」で育てます。旨味成分であるテアニンが、渋み成分であるカテキンに変化することを防ぐため、香り高く、まろやかなお茶になるんです。

そしてお茶摘みさんの摘み方も、とても大事な要素。手先の器用さによるのかなあと思うのですが、不思議と摘み方のうまい人は最初からとても上手。やわらかい新芽だけをきれいに摘み取ってくれるんです。

よく来てくれる方の中には“よし、次は〇kg摘むぞ”って目標を立てたりするみたいです。そういう楽しみを見つけてくれるのもうれしいですね。

私たちにとって、茶園の風景はもう当たり前のものになってしまっていますが、やはり茶摘みのシーズンに来てくれる方は、お茶の香りが漂うこの情景をとても喜んでくださいます。よしずの間からちょうどいい光が射しこんで、“ここで食べるおにぎりは本当においしい”と感動してくれることも。

昨年はちょうどコロナの感染拡大が始まった頃に新茶のシーズンを迎えたので、あまりたくさんの人に来ていただくわけにはいかなかったし、来てくれた人も少し不安だったと思います。

でも、気持ちのいい5月の風が吹き抜ける中、お茶の香りに包まれながら集中して茶摘みをするのが、とてもいいリフレッシュになったとお話してくれました。

今年もお茶の質はいいのですが、まだまだ茶摘みの時期には、状況は落ち着いていないでしょうね。検温やマスクの着用、車の除菌など徹底的に対策をしながら、皆さんをお迎えするつもりです。

そして落ち着いたらたくさんの方に来ていただいて、この宇治白川の茶園の風景とともに、香り高いお茶を味わってほしいなと思っています。





このコラムは「TOKYO TEA JOURNAL」VOL.25に収録されています。

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