麻生要一郎「11月は、新そば。」- TOKYO TEA JOURNAL 巻頭エッセイ

麻生要一郎「11月は、新そば。」- TOKYO TEA JOURNAL 巻頭エッセイ

TOKYO TEA JORUNALの巻頭コラムを飾る、料理家・麻生要一郎さんのエッセイ。季節を感じながら、毎日のちょっとした幸せを見つけられるような麻生さんのエッセイをお楽しみください。月に一度更新予定。

11月は、新そば。

 「新そば」と店先に札がかかると、うきうきする。

 実家の近くにある蕎麦屋の看板メニュー、ゆりねと海老のかき揚げせいろ。ゆりねのほくほくした食感、キリッとした蕎麦の相性は格別。地元の名物、あつあつのけんちん汁に蕎麦をつけて頂く「つけけんちん」は、汁は温か、そばは冷たくの良いとこどり。どちらにしようか悩んだ挙句、とっさに「鴨汁せいろ」と注文してしまったりする。

 父の従兄弟が趣味で蕎麦打ちをはじめ、年末になるといつも年越しそばを届けてくれた。準備も、打つのも、切るのも、本当に大変だったと思う。僕はその蕎麦が大好きだった。おじさんが亡くなってしまって、一層恋しい味になっている。
 家業の建設会社にいた頃、よくごはんを食べに連れて行ってくれて「要一郎は、いつもみんなに気を使ってるから、今日は全部俺がやってやるからな!」と、料理の取り分けまで、全てやってくれた。若かったので、どこかくすぐったいような照れ臭さもあったが、本当にありがたい時間だった。

 新そばの季節や、年越しそばを食べる頃、そのおじさんをいつも思い出す。今年はチョビと2人、蕎麦打ちに挑戦してみようかな。おかかを、たくさんのせて食べたいと、チョビは言っています。皆さんの新そばの思い出、お便りをお寄せ下さい。

麻生要一郎

あそう・よういちろう|1977年1月18日生まれ。茨城県水戸市出身。料理家・随筆家。 家庭的な味わいのお弁当が評判となり口コミで広がる。雑誌への料理・レシピ提供、食や暮らしについての随筆を行う。初の単行本『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社刊)を刊行。2022年1月には第2弾『僕のいたわり飯』(光文社刊)も。

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Illustration:fancomi

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