「茶器を選ぶ。自分と向き合う。」- TOKYO TEA JOURNAL VOL.72 巻頭コラム

「茶器を選ぶ。自分と向き合う。」- TOKYO TEA JOURNAL VOL.72 巻頭コラム

TOKYO TEA JOURNALの巻頭コラムをご紹介。お茶のこと、うつわのこと、お茶菓子のこと。
私たちが企画した商品やよいと思った品に、向き合って、改めて見つめてみて思ったことや考えたことをお伝えします。

茶器を選ぶ。自分と向き合う。

寒さの残る季節から、少しずつ春の気配が感じられるようになると、磁器やガラスの茶器に手が伸びるようになる。

冬のあいだは、ひんやりとしたそれらの茶器は棚の奥でひと休み。代わりに活躍していたのは、土のぬくもりを感じる陶器や、荒々しい木の質感をもつ道具たちだった。けれど、気温の上昇とともに、求める素材が変わってくるのが面白い。

その日の気温や気分に寄り添うような茶器を選ぶには、自分の感覚に耳を澄ます必要がある。その小さな選択に、自分を丁寧に扱う意識が宿るのだと思う。

写真に写っている道具たちは、どれも作り手の丁寧な手仕事が伝わってくるものばかり。思わずこちらも背筋が伸びるような、静かな緊張感と気品がある。

たとえば、色原昌希さんの茶壷。持ち手の形や位置、太さまですべてが淹れる人の動きに寄り添っていて、手にすっと馴染む。白釉のやわらかな光沢は、陽の光に当たると内側から淡く発光するようで、その景色を眺めながらお茶を淹れる時間は、格別に豊かだ。

村田匠也さんの茶杯は、見るだけで心が落ち着いてくる。内側には透明釉が施されており、お茶が滑らかに注がれ、香りも際立つ。縦に長い形状は、香りをとどめてくれるのも嬉しい。

南裕基さんの隅切盆は、縁に彫り込まれたラインと、天面に残されたノミ跡との対比が美しい。木の陰影をじっと眺めていると、不思議とお茶に向かう気持ちが整っていく。

茶器を選ぶという行為は、お茶を淹れる前から始まる。道具を選ぶことで、お茶の時間はさらに深く、豊かなものになる。そんな小さな選択の積み重ねが、日々のお茶の時間を、自分と向き合う大切なひとときに変えてくれるのだ。

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